友人にデラ不評ですげぇ心配して観に行った本公演。
総評としては佳作。最優秀ではないけど残念賞でもない感じでした。うん、友人はセンシティブなお方だったの忘れてた。ふつーにふつーです。うん、ごめん普通だよ。極上ではない。
本としては良くできた脚本です。能の鉄輪は見たことありませんが、なかなか秀逸な脚本だと思いました。脚本だけなら再演、再再演可能じゃないかという出来。
今の日本では「愛する」と言う事がキリスト教の影響か「最も良いこと」と思われがちですが、古来からある日本の思想では「愛」は憎しみを生むので必ずしも「良いもの」として分類しません。その辺の理解がないとこの話は納得いかないかもしれませんね。過ぎてはいけない中庸の精神を知らないと馴染まない。でも、そのあたりをものすごくわかりやすく話として展開してあり、納得いかなくても理解はできるのではないかと思いました。
岡本さとる、さすが伊達ではないな。すばらしい。
以下、ネタバレですんで名古屋公演まで見られない方はご注意。見ない方がいいです。(私は舞台の予習を嫌うので、舞台はできれば真っ新な状態で見ていただきたい)
演出は、舞台変換がほぼなく、大きな障子2枚と小道具が少々のみ。
これは、私的に評価できます。
芝居に背景や大がかりな舞台装置はいらない、が私の持論です。一番の理想は、何もない背景の前で役者が「いいお日和で」といえば目の前に晴天の空が広がり、役者が洋装で「うわ~すごい!豪華なお屋敷だ~」といえばごってごての洋風お屋敷が出現する。そう、役者の力量で舞台に草を生やせ空を描き、室内の様子を演出する、それが芝居の神髄だと思っております。
そういう意味では、まっとうなチャレンジを役者に科した点で高評価でした。それに役者が応えていたかというと、ま、普通でしたな。感動レベルじゃなかった。でも、場面はちゃんと成立するだけのものはあった。
演出の大失点は浄瑠璃が長すぎること。
歌詞に意味があるのはわかるのですが、英語と同じぐらい聞き取りに苦慮するのでテロップで流す必要があった。流さないのなら、意味が分からなくても効果として効くような演出にするべきで、その場合は短くないと現代人の感覚に浄瑠璃はついていかない。
クライマックスの要所要所や、クライマックスに至る道程の要所に取り入れれば非常に素晴らしい演出となったと思いますが、道程からクライマックスまですべて浄瑠璃は客がダレます。
大和悠河さんには申し訳ないですが、長時間の舞を魅せられるだけの日本舞踊なりなんなりの名手ではない方の長時間の舞は意味があるんでしょうか。これがどっかの人間国宝だとかよっちゃん先生とかみえこ先生ならまあ、納得しますが。ちょっと長すぎるんだよね。
さてさて、われらが遼河はるひ!!
超美しい赤鬼でございました!!
怖い顔で凄味のある青鬼(水町レイコ)に対し、笑顔が恐ろしい鬼女でいい対比になっていました。
1回目は左手の超端っこで見てたんですが、白拍子に扮して清明の前で舞う時に、いちいち清明を見るときは睨みつけるんです。で、視線が外れると美しく笑い、清明が紅葉(赤鬼)を見たときには・・・
艶然と微笑みやがった!!!
人を魅了する微笑みをこれでもかと投げつけて行くんですよ!!
これは最高にゾクッと来ましたね!遼河はるひだからできる芸当ですよ。美人じゃなきゃできないし、ただの美人にはできない。
恐るべし、遼河はるひ。
また、谷さん(大和悠河)の美しさと、あひちゃん(遼河)の美しさが重なるので、最後に沙月の行く先がすんなりと理解できるんですね。そして、ああ、紅葉や鈴鹿はこうして鬼になったのか、と理解できる。
水町さんとともに、とても重要な役を見事に果たしており、ファン冥利に尽きました。
見ることができて幸せだったよ!
市川月乃助さんの安倍清明は、まじで呪を掛けてんじゃないかと思うぐらいリアリティがありました。総髪じゃなくて烏帽子姿のほうが私は好みなんですけどね、清明象。なんとも健康的な清明さまで、でも安倍清明が病的な姿と決まってるわけでもないのでこれもありかと。えれぇ強そうな清明様でしたな。
谷さんは、声も綺麗な女声でビックリ。
私はとにかく声がきれいだと感心しました。
鬼になったら背中が男役でしたが。でも、鬼ってああいう姿だよな、と思ってみたり。(男でもなく女でもない姿)
退団後のお姿を初めてみましたが、すっかり美しい女優さんになられてて嬉しい限りでした。
春宮亮、舘形様。
ものっそい怪演。はまり役。コンテンポラリーダンス(かな?)の方なのであまり演出上得意のダンスが入れられていなくて残念。でも、ダンスの人だとばかり思っていたので、役者クラスタでも生きていける方とは知りませんでした。この方見るだけでもこの舞台、見る価値ある気がしてしまうぐらいすげぇ。
塩谷瞬 as 頼光 is 女に気を付けなければならない男ww
二股騒ぎでその演技力までボロクソ言われていたのでどんなもんかと思っていたのですが、まあ、悪くない。目を覆うほどの大根演技ではないので、精進して演技力に磨きをかけて行ってほしいかな。
ちなみに、私の見たときのラスト付近、清明に「女には気を付けなされ」といわれるシーンの、清明様のアドリブは・・・・・・・・・・・・おしえないよん。(マスゴミに検索で見つかってネタにされても嫌なんで)
ちなみに、会場周辺には報道の人間がウロウロしてました。迷惑だ。
物議をかもした四条宗晴(沙月・大和の夫)、黒田アーサー。
友人、大先輩ともに「女二人が惚れるほどの男に見えない」と言わしめた演技・・・。
ぶっちゃけ私はその疑問に、
「女二人とも『名刀鍛冶・四条の匠』という肩書を愛しているだけ」
と即答出しちゃったので特に何とも思わなかったというw
だって、そうでしょうよ。人間的に魅力があったらもっと年の釣り合う女と結婚してるって。若い嫁もらうパターンて金持ちになってからとかが多くないっすか?
そんでもって、女は自分の打算に気付かないふりをして男を愛してるって錯覚するのよね。
愛しすぎは蛇となり鬼となる、その図式に「愛、愛、愛、というけれど、その愛の方向はどこさ?」と言う嘲笑いも重ねて完全に「愛に執着すること」が悪であるとしたいのかな~と。
だってさ、四条の匠自身を本当に愛して鬼になっちゃってもそれはそれで正しいんだけど、感覚的になんだかモヤモヤするじゃないっすか。
・・・という深読みをいたしました。
それ狙いなのか、演技力の問題なのかは・・・各個人の判断にお任せってことで。
水町さま、鈴鹿(青鬼)
迫力の女番長・・・じゃないや鬼女。
あひちゃんとのコンビネーション、対比がよかったです。デラ強そうな鬼だ…。
というわけで、・・・・あ!名古屋公演まだあったんだ!!!ネタバレ書いちゃった。ま、いっか。既に筋書きのある能が下敷きだしな。
ちなみに、ファン有志からのお花は、赤のお花でまとめた素敵なものでした。今回、参加しなかったけど、毎回お花を発注する方というか発注先のお店というか、お花のセンスがいいな~と思うです。
名古屋公演もいきたかったけど、ちょっと無理だ。実家帰らないと。