謎のブログ

謎の生物(゚Д゚)@謎が書く謎のブログ。気の向くまま風の向くまま。

オールド・スポート

 「グレート・ギャツビー」読み終わりました。

 正直、一度読んだだけではこの作品の奥深さは私には分からなかったですね。たぶん、分かっていない。でも、一回読んだだけでも分かるものもそこそこあるので、思いつくことを書いてみたいと思います。

 ストーリー的には、どって事のないストーリーなんですよね。ここでネタバレしても何の支障もないぐらい何か素晴らしい展開や捻りがあるわけでもない。

 じゃあ、何が素晴らしいのか。

 それは流れるような文体で紡ぎ出される人物やニューヨーク周辺の町並み、人の心の動き、そして物語。

 訳者:村上春樹自身があとがきでも書いているように、それらを日本語に置き換えるのは非常に大変な作業だったと思う。この作品は、意味さえ通じればいいというような荒い訳で読んではその真価が半分以下になってしまう。

 そう言う作品だ。

 文体・言葉の流麗さ華麗さは舞台になるとそれは、舞台装置であり演出の妙であり、役者の力量に置き換えるしかない。おそらく、どんなに素晴らしいストーリーの台本よりもかなり、舞台関係者にとっては厳しい器量を要求されると思う。先にも書いたが、ストーリーが素晴らしいと言う類の作品ではないからだ。ストーリーが良ければ若干器量が落ちても(落ちすぎは困るが)なんとか舞台作品としてそこそこの物になる。

 小池修一郎という人は、単なる向こう見ずなのか、その辺を全てクリアできる自信があるからこの作品を舞台化しようと思ったのか・・・どっちだろう。

 訳者のあとがきには、並々ならぬ覚悟と決意でもって翻訳に挑んだことがよく伝わってくるくだりが何度も出てくる。この作品は、読んだ者をそうさせる何かがある。

 きっと、小池先生も再演に当たって2本ものから1本ものへ時間が長くなったこともあるし、並々ならぬ熱意でもって作品を作り上げてくれると思う。もちろん、生徒もスタッフも。

 

 ところで、ギャツビーがよく使う「オールド・スポート」は今回舞台ではどう訳しているのだろう。村上氏は

『「オールド・スポート」は「オールド・スポート」でしかなく、「オールド・スポート」以外のものではあり得ないのだ。』

と結論づけて、これに対する訳を提示していない。おそらく、イギリス人の使うold chap(君)と言うような意味のようだが、アメリカ人はそう言う使い方はしないと書いている。20年、村上氏はこの言葉の訳をさがして、結局見つからなかったそうだ。(その辺りの理由は本を読んでいただきたい)

 私も、そんな英語の理由や意味は分からないけれど、読んでいる間中、ギャツビーが「オールド・スポート」と口にする度に、彼の胡散臭さというか、わざとらしさや格好つけている感じを感じていたので、瀬奈さんにはぜひ、ニックやトムに

「オールド・スポート」

と呼びかけて欲しいと思う。きっと瀬奈ギャツビーにはそれが似合う気がする。「君」なんかよりもずっと。

 

 村上春樹訳の「グレート・ギャツビー」はとても読みやすく、素晴らしい文学でした。まあ、他の訳本は読んでないけれど、今の人に勧めるのならばこの本をお薦めしますね。

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著者:スコット フィッツジェラルド,村上春樹
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